2016年2月号 赦し難きを赦す

 今、天皇皇后両陛下が過去の戦争への反省と慰霊の為フィリピンをご訪問中です。フィリピンでの日本と米の戦争で、両国の兵士はもちろん、フィリピンの民間人も100万人以上が犠牲となりました。

 終戦の時にフィリピン刑務所には戦犯として日本兵108人が収容され、うち79人が死刑を宣告されていました。

日本人画家の加納莞(かん)蕾(らい)氏は彼らの釈放助命嘆願の為に、キリノ大統領、マッカーサー元帥、インドのネール首相、ローマ法王等にあて数年間で合計228通の手紙を書き、そのうち48通がキリノ大統領へのもので、ついに目的を達成したのです。その間は、絵も描かず嘆願の為に命がけで、家計は火の車でした。

 当時のフィリピンのキリノ大統領は、妻と幼い子供3人、家族5人を日本兵に殺され、日本人の銃剣によって殺された2歳の子供を自らの手で埋葬したのです。

以下 加納莞蕾氏からキリノ大統領にあてた手紙の一部です。

「日本人であるが故に負わなければならない戦争への罪の意識を反省し、厳粛なる罪と裁きの前にある己を認識いたしました。また「肉体で生きている生活は、神の子としての信念での生活」ということを悟りました。「赦し難きを赦す」という奇跡によってのみ人類に恒久の平和をもたらし、「目には目を」ということでは、平和は決して達成し得ないことを、強く感ずるのであります。だれも閣下の胸中にある悲しみと怒りと憎しみの深さを計ることは出来ないでしょう。しかし、私は、主に感謝し賞賛せしめる偉大なる奇跡を現す為に努力しているのは、天国にいます閣下の愛児たちだと信じております」(文書の一部を省略、簡略化)

キリノ大統領が、苦渋の決断を下した理由をメッセージとして告げています。それは「私の子供や国民の恒久の友となるかもしれない日本人に憎悪を受け継がせない為」です。彼はついに特赦により全員を解放したのです。フィリピン国内で、反日感情が高まっていた折の勇断であり、この二人のような総責任者、そして勇者たるお姿によって憎しみの連鎖が断ち切られ、私達は今の平和を享受できています。

そして、日本人を代表して深い反省と平和への強い願いを届けに、今両陛下がフィリピンをご訪問くださっているお姿と笑顔に、大きな希望の光を感じます。

 

総責任者として感謝の心を育てる

平和を成し遂げるために、今私達は加納莞蕾氏やキリノ大統領、両陛下と同様に、総責任者として、人と比べ打ち勝ちたいという競争心、妬み、虚栄心等の争いの心を消し去り、赦し難きを赦し、愛し、与え、支える心を育てる必要がある、今がその時です。

本当の感謝とは、自分に都合が良くありがたいことへの感謝ではなく、赦し難きを赦し、さらに与え支え愛する心です。本当の感謝こそが、調和と平和をもたらします。そして、本当の感謝は、私達誰もが、本来心の奥に宿している神なる心なのです。

そういう深い感謝を表す言霊が真言としての「ありがとうございます」であり、「ありがとうございます」は、マイナスの心をサーっと消し去り、愛の光を輝かせる言霊なのです。

のさか れいこ