2010年 11月号 「恩返しの生き方」

2010年 11月号

恩返しの生き方 ~ DVD笑顔セラピーからいただいたもの ~

毎日通う道で、ふと金木犀の香りに足を止めました。
季節は確実に移ろって、美しい日本の秋の真っただ中。
笑顔セラピストの中川千都子です。
思い返せば、昨年の金木犀の季節には、私は病院の白い部屋の中。何度目かの手術を受けていた頃です。
その時の私の状況と言えば、手術の痕は確かに痛いものの、気持ちはとても静かで平和でした。知らず知らず口元に微笑みが浮かぶほど安らぎの中にいたのです。そうして、その確かな安堵の中で、病室の天井を見つめながらずっと考えていたことがあります。それはただ一つ「恩返しで生きてゆく」ということでした。 何度となく肉体は弱っても、また再び三度(みたび)四度(よたび)と回復してゆく命の力。それほどまでに私を生かそう活かそうとしてくださる、人智を超えた大いなる力に、とにかく応えること、そればかりを考えていました。

 驚異的とまで言われた回復力で以前以上に元気になった私の前には、ごく自然にこれまでと違う道が拓けていきました。その一つが笑顔セラピストによるDVD笑顔セラピーです。
 4月から私の主宰による笑顔セラピーが開講、この講座に本当に受講生が来てくださるのかな、と思うこともありましたが、たとえたったお一人の受講生だったとしても、私はその方のために、全身全霊で講座をさせていただこう、と決めていました。
迎えた開講日、嬉しいことにたくさんのお出会いをいただき、ただもう感謝で胸はいっぱいでした。
受講料は一回1800円。これまでの私ならあっという間に無駄遣いに消えていた金額です。けれども、受講料として毎回いただく1800円はずっしりと重く、光に満ちていました。貴重な時間を割いて、朝早くから私の講座に足を運んでくださる方々がいてくださるということ、その方々からお預かりしているお金だと思うと「お金」はお金を超えて神々しいものとして私の前にあったのです。そしてあらためて、髪の毛の先からつま先までこの私の体はもとより、持つもの全てをめいっぱい使って、皆さんに笑顔とありがとうの生き方をお伝えしていこう、と新しい力が次から次と湧いてくるのでした。

春の開講から半年が過ぎ、秋を迎えた講座最終回。その日受講生の皆さんは、講座中に人生が大きく変わっていった喜ばしい変化をいきいきと語ってくださいました。
「これで全ての授業が終わりました。皆さまありがとうございます」今期講座最後の挨拶をした私は、思いがけない大きな拍手に包まれました。お辞儀から顔を上げると輝く笑顔・笑顔・笑顔。まるで部屋中に花がこぼれ咲くかのような明るさと、温かいエネルギーが私たちを包んだひとときでした。
講座では確かに私たち笑顔セラピストは「講師」とはなっていますが、私たちが皆さんに教えて差し上げてきたのではない、皆さんと良い力の交流をし続ける中で、プラス一元の生き方に近づく螺旋階段を共に昇らせていただいてきたのだ、と感じています。
胸にはっきりと刻んだ「恩返しで生きてゆく」ということがどういうことなのか、いまも答えを掴んだわけではありません。けれどもひたすら「今ここ」を精一杯重ね、秋からの講座も喜びにあふれて始めていきます。自分の時間とこの体を本気になって夢中で使っていくこと。その中で見えてくるものがきっとあるに違いないと信じています。
             

中川 千都子